歌の練習【プロとアマチュアの境界線】


以前、

パーカッショニスト/ドラマーの

小澤亜子さん(ex ZELDA)と

こんな会話を交わした。


何についての話から

そういう話題になったかはさておき、


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S:「そこの境界線って

けっこう難しいけどシビアじゃないですか

プロとしてのOKラインというか」


A:「わかります。 

プロとの境って、微妙だけど、確実に違う。」


S:「ありますよね。

言葉にして伝えるの難しいけど。」

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たぶんこの会話のやりとりを見て

腑に落ちる人というのは基本、


過去に数年以上は自ら制作した音楽を

生業として暮らした経験のある人


なのだと思う。


記事分類上、【理論】という

カテゴリーに今回一応しておくけれど、


このテーマについては正直、

”境界線”というやつを

明文化して解説するのはとても難しい。


でもたしかに存在する境界線。


それは単に技術の問題だけでもない

声質の問題だけでもない、


とても微妙だけど絶対的な違い。


いつ超えられるのか、

どうやれば超えられるのか、


もしかしたら誰も明確な回答は

持ち合わせてないし、


たぶん答えは一つじゃない。


よく巷でありがちなのは、


「(なんとなく)上手そうだけど、実はプロじゃない」

「(なんとなく)上手じゃなさそうだけど、実はちゃんとプロ」


この二つの勘違い。


前者というのは程度は違えど

全国にほんとにたくさんいて、

10人いれば9人以上が

ここに該当すると思う。


これについては

あくまで「プロ」という定義を

基準としての話に過ぎないので、


あらかじめ断っておくけれど

歌う本人がそもそも

そこに興味がないなら外野から

とやかく言われる筋合いの話ではない。


私個人についていうと

基本的に前者には興味がなく、


後者のようなタイプの歌い手のほうが

圧倒的に興味・関心が沸きやすい。


その理由は、

その人独自の感性や才能によるところ

つまり内面要因が大きいから

なのだと思う。


私はスキル至上主義ではないけれど、

一定ラインまでのスキルは

プロであるなら当然必要だと思う派。


でももし、それをも凌駕する

感性と才能があれば少々スキル不足が

仮にあったとしても、それは全く問題ない。

全体の中ではかなり稀なケースだけど。


ただ、往々にして

そんなふうに、つまり、

どちらかというと”歌唱派”ではなく

スキル不足のように見えるプロの歌い手ほど


よくよく観察していると

世間の想像以上にスキルが高かったりもする

ことは実はけっこう多いのだ。


だからこそ、分かりやすい「巧さ」は

さほど必要ないけれど、


プロとしての合格ライン

みたいなものはクリアしておきたい。


それが私の持論。


その上でスキルを

あえて出す、出さない


この選択とコントロールできる地盤が

あるのと、そもそもないのとでは

全然意味が違うんだよ という


それは私がこれまでたかだか

何十人程度だけれども歌唱指導の中で

つねに伝えてきたことでもある。


昨今、レコーディングと編集技術の

飛躍的な進歩のおかげで


ぶっちゃけピッチやリズムは

形だけならどうにでも修正できる

ケースは確実に増えた。


でも時にそのピッチの微妙な不安定さや

リズムのズレが”味”や”グルーヴ感”

といったスパイスになることが、

音楽や歌という世界には往々にしてあり得る。


それがあくまで「味」とか「グルーブ感」

という枠内におさまって受け取られるのか

あるいは「ただの音痴」に成り下がるのかは、


案外ものすごく基礎的初歩的な

スキルの高さが実は下支えしてくれる

ことが多いように思う。


表現力をつける上でも

もちろん基礎スキルが高ければ

高いに越したことはない。


ただ、スキルって

身長と同じようなもので


ある程度、その人によって

できるレベルの限界が生まれつき

決まっているようにも思う。


もっといえばポテンシャルを

100%活かせるだけのスキルを

ただ身につけることにも

実はさほどの価値はない。


たとえばそれは

身長が誰より高いからといって

トップモデルになれないのと同じこと。


もしスキルだけで圧倒的な

何かを人々に与えようと思うなら


それこそホイットニー・ヒューストンや

セリーヌ・ディオンと勝負できるくらいの

ポテンシャルが必要だろうと思うし、


そうでなければよほど武器になるほどの

【天性の声質】が必要だとも思う。


私自身含め、そのどちらにも

該当しない・できない歌唱者が

ほとんどなわけで、


そうなると結局のところ

最低限合格ライン以上の基礎スキルと

歌唱者独自の特性というもののバランス


これがやっぱり重要なのかな、

というところに落ち着く。


そのバランスが人によって異なるので、

明確な回答は一つに集約されない。


結局そういうことなのかなと。


リアルに見る、聴くだけなら

話は早いのだけど


こうやって解説文にしようとすると

とたんに小難しくなってしまうな。笑


ま、でも

それくらい歌って簡単そうで

複雑なんだってこと。


聴く分には

そんな面倒くさいことなんて

いろいろ考える必要もないし、


一定レベルを超えた歌唱者であれば

むしろこういう辛気臭いことは

取っ払って自由に歌ったほうが断然

オモシロイんだけどね。



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