TuneCoreで売れない3つの理由
TuneCore(チューンコア)という
音楽販売システムの広告が
私のTwitterにも時々流れてくる。
音楽ビジネスは戦後芸能から始まり
歌謡曲、J-POPという流れをたどりつつ
長らく昔ながらのビジネスモデルの中で
業界が回ってきた歴史がある。
CD(業界ではお皿とか盤とか言う)が
売れなくなってきたころから
音楽作品をユーザがサイトから
ダウンロードして購入し楽曲を楽しむ
という配信スタイルにシフトしていき
今では業界泣かせの”サブスク”とやらが
定着しつつあるとかないとか。
(分配の仕組みさえ作家をきちんと考慮して
構築されるなら個人的には別に何でもいいけど)
音楽ビジネスの在り方は
今の時代、ミュージシャン側にとっても
多様性をもつようになった。
その一つの典型が
本記事で取り上げるTuneCoreのような
デジタル音楽配信委託サービス。
要するに昔ならプロの歌手や演奏家を
目指すならメジャーレコード会社と契約し
マネジメント事務所に所属する必要があったが
そんな環境がない個人であっても
そうしたサービスを利用することによって
自身の楽曲を全世界に配信し
その楽曲が誰かに購入されることで
収入を得られる時代になったのだ。
とまあ、こう解説すると、
「イイ時代になった!
メーカーやプロダクションの後ろ盾のない
インディーミュージシャンでも音楽で
食べていくことができる!!」
と、思う人もいるかもしれないが
喜ぶのはちと短絡的かもしれない、と
まずはお伝えしておきたいと思う。
というのも実際に
TuneCoreを利用して楽曲配信をしたが
まったく曲が売れない・・・
という素人音楽家がかなりいるらしい。
1994年から業界に関わっている
私から言わせてもらえば当然
まあそうなるでしょうね、という話なのだが
事に道理を理解していないのだから
ある意味致し方ないとも言える。
そんなわけでこの記事では
素人が思いつきで作った楽曲を
思いつきで配信してみたとて
まあまず売れないであろう理由を
お話したいと思う。
TuneCoreで売れない3つの理由
この記事をあなたが読んでいるということは
TuneCoreに楽曲登録してこれから配信したいと
考えている状況か
あるいは
すでにTuneCoreで配信に挑戦してみたが
いっこうに売れないので原因と打開策を模索している
端的にいうとこの2つの状況のいずれかに
当てはまっている人が多いのではないかと想像する。
(単純にTuneCoreを含めて配信サービスについて
リサーチしている、という人もいると思うが
そういう人は恐らく他の記事を優先して読んでいると思う)
あなたが今どちら側であるとしても
売れない原因になり得る要素を知っておけば
少しは状況を良くすることができる可能性があるので
このあと挙げる「 TuneCoreで売れない理由」について
考えたり対策してみてほしい。
TuneCoreで売れない理由(1)「 登録配信設定しただけ」
音楽を含むエンタメの世界では
その他の業種や商材と違い、
条件が整えば必ず売れるという確率が低い。
もちろん一般的な商材についても
”何がヒットするか分からない”という要素は
なくはないけれども、兎角このエンタメという
業界においては見立てが難しい。
だからといって何でもかんでも闇雲に
やりたいことをやりたいようにやってるだけでは
ますます目標は非現実的なものになっていくことを
せっかくこのブログにたどりついたのであれば
今日から肝に銘じてもらえるといいと思う。
あなたは過去に何かの商品や人、会社など
公式サイトやブログ、SNSを検索して
なかなかたどりつけなかった経験はないだろうか?
よくよく考えてみてもらえれば
至極当然の仕組みなのだが
インターネットの世界なんてのは
言うなれば 宇宙のような場所であって
無数のサイトや情報がその中に存在している。
ゆえにその一つ一つを探し分けて
他の誰かが何の取っ掛かりもなく
あなたの作品情報にたどりつくことは
物理的に考えてそもそも至難の業なのだ。
たしかにTuneCoreのようなサービスは
メーカー契約がない、またはそれを必要しない
音楽家などのクリエイターにとって
とても画期的で便利なものであるが 、
多くの者はサービスの基本機能を
ただ使って登録配信だけして終わっているはず。
でもそれでは商品は売れない。
なぜなら、あなたの商品以外にも
TuneCoreという宇宙空間には数え切れないほどの
楽曲が存在しているのだから。
考えてもみてほしい。
自分が商品を買う側だとして
それだけたくさんの作品情報が転がってる中で
何のきっかけもなくたった一曲を
それもいきなり見つけることができるだろうか?
事の鍵は
まず【仕組みを知る】ということ。
考え方としては
「どうすれば人の目につきやすくなるか?」
ということに尽きる。
これは永遠の課題でもあるし
時代によって一定のトレンドもある。
しかしながら各プラットフォームには
それぞれに一定決まった仕組みがあるはずで
その中でいかに露出を勝ち取れるか
登録配信するだけではなく
そういったことも予めまたは事後
意識的に楽曲が置かれている環境設定を
していくことが必要だろう。
その具体的な手法については
この記事では取り上げないけれども
こうした視点を持つだけでも
世界の見え方が違ってくるはずなので
ただ楽曲を作って、登録配信する
という、時間と工数さえ費やせば
ある種誰にでもできることだけやって
”やったつもり”で終わらぬよう
戦略を考えて配信活動してみてほしい。
TuneCoreで売れない理由(2)「 独りよがりの楽曲」
音楽作品を書き、演奏し、場合によっては形にし、
販売することで生計を立てるということは
当たり前のことだけれど
購入してくれる顧客あって、初めて成り立っている。
音楽が趣味の金持ちが道楽で自分が書いて演奏した曲を
人生の記念に50万円出してCDにするのとは
根本的にワケが違う。
TuneCoreの配信サービスを利用している人たちは
大手メジャーレーベルやマネジメント事務所などが
背景についていないケースも多いと思うが、
規模の大小はあれどそうした環境の違いとは
実は関係なくこの当たり前の図式を腹に落として
音楽を販売することが必須だ。
あなたも日常普段、生活に必要な日用品や
その他さまざまな商品は選んで購入するだろう。
とくに衣料品、女性であれば化粧品など、
自分なりにこだわりのあるものや
趣味趣向が強く投影されるジャンルの品が
多かれ少なかれあるはずだ。
そういった商品を手にする時、
購入する側の心理にあるものとは、一体何か?
音楽を芸術ではなく商売として
従事し販売する者として生きるならば
まずそこをつねに考え続ける必要がある。
兎角、音楽や歌の道を志そうとする者に
欠落させがちな思考とは「独りよがり」というやつだ。
あなたは
完全に購入を検討してくれる顧客のことなど
まったく度外視して自分都合120%で
楽曲を制作していないだろうか?
もし胸に手を当てて振り返ってみて
ドキッとする点があったなら今日からその思考を
矯正していくことをおすすめする。
では”独りよがりでない”作品とは具体的に
どういうもので、どうアプローチすればいいのか?
とても短絡的にいうと【共感】である。
この言葉は今の時代もはや多くの講演者に
使い古され切っている表現だが、
それさえも気づいていない人にとっては
目から鱗になる言葉でもあるので敢えて使っておく。
本当はさらにこれを掘り下げて
もう一段具体化して腹に落とすくらいで
ちょうどいいと思うが、
そこまでの話はいずれ私やつながりのある
一線で活躍するような作家陣などを募って
ワークショップなど開催するような機会があれば
その時に客観的事実として語られるほうが
良いのではないかと思うのでここでは触れずにおく。
まずは「独りよがりではない作品」を心がけて
制作・販売してみていただきたい。
TuneCoreで売れない理由(3)「 あなた自身の適性レベル」
一定の露出環境があり、
楽曲(メロ・歌詞・編曲)も悪くないのに、
なぜか売れない人というのもいる。
これは究極の課題かもしれないが、
「運がない」か「実力不足」のいずれかだ。
かなり辛辣な物言いに思われるかもしれないが
あなたが目指そうとしている歌とか音楽なんていう世界は
そうそう容易いものではないということを
今一度、肝に銘じてほしい。
昨今は「風の時代」などと言われたりするように
誰かが何かに挑戦することの自由度が上がり
【軽やかに生きる】みたいな考え方が支持されがちだが
それはあくまで一般的な世界の話であって
こと商業音楽の世界に於いては少なくとも
その思考で皆がどうにかなれるほど容易い道ではない
ということは昔も今もそう変わりのない現実だと思う。
ただし、TuneCoreのようなサービス然り
音楽作品を商品として販売するためのインフラや
そもそも音源化するためのインターフェースや
デバイス等の発達によって
”誰でも気軽に挑戦する”
という間口や裾野は格段に広がったし
そういった時代環境の変化の恩恵を受けて
昔なら開花されることも発見されることもなかったであろう
才能が生まれて活躍する、という確率は以前より増えたと思う。
ただし母数がそもそも拡大化されているわけなので
レベルはさておきライバルの数も以前の比ではない位
同時に増えていることを理解しておく必要がある。
どのタイミングで誰につながるか
という運が実はこの業界、もっとも重要
とも昔から言われるのだが、
これは自分の意志や取り組みだけで自動的に
手に入るものではないがゆえ、もっとも難儀な要素でもある。
ただし適切な行動量が不足しているのであれば
そこを補塡する動きをとっていくことで
状況がいくらか開けるとか、可能性が上がる、
といったことはあるかもしれない。
もしあなたに圧倒的な実力不足あるいは
そもそも他には絶対負けていないと
自負できる【何か】もない状態で
単なる承認欲求だとか憧れを根拠にこの道を
目指そうとしているのであれば
手厳しいようだが、己の適性を今一度見つめ直し
音楽を商売にする道を志すことが
自分に向いているのかどうかを
立ち止まって考えみるほうがいいと思う。
人生は有限だ。少なくとも今世の限りは。
その中で何かを成し遂げても成し遂げなくても
本来、人の生命というのはそれ自体に価値がある。
仮にあなたが歌や音楽の道で
思い描いた夢を達成できなかったとしても
それも一つの人生の形だと私は個人的に思う。
ただもし、あなたがそれを成し遂げたいと
考えているとしたら
どうしてうまくいかないのか?
と嘆くのではなく
どうすればうまくいくか?
と常に考えることが最善の選択だろう。
結果、望む未来が確約されるわけでもない。
ただ可能性を上げるためにできることを
適切に積み上げていく。要はそれしかない。
TuneCoreで売れない3つの理由 まとめ
長年、音楽業界に関わってきて
私自身も含め多くの音楽人の生き様を見てきた。
一つ確実に言えるのは「容易くない」ということ。
この言葉に尽きる。
そう、どんなに才能があって陽の目を見た人達も
国民的大アーティストと呼ばれるような人であっても
例外なくつねに戦い続けているということを
駆け出しか無名、無実績の人たちは知っておいてほしい。
その上でどうこれから自分は戦っていくのか
そもそもこの沿線上で戦っていくのか
しっかり自分に向き合っていってもらえたらと思う。
この記事ではTuneCoreというサービスを
一つのモチーフとして取り上げて話してきたが
この視点はどんな環境や状況にも共通する。
これを避けて音楽を生業にすることは
200%無理と断言してもいいくらいの話なので
今の自分がどれくらい甘い考え方をしているのか
この記事が気づくきっかけにでもなってくれれば
私としては本望だ。