歌の練習【プロとアマを分けるビート感の重要性】

 

これまで過去の経験を通じて

思いのほか多くを明文化してきたが


トレーナーではない立場の私にとって
 
自分では当然のように理解していても
 
十分に明文化し尽くせていないことは
 
まだまだたくさんある。


最近になってピッチ以上に重要な
 
プロ歌唱要素として「リズム」について
 
何度か取り上げていたが


この「リズム」という表現に私自身何か
 
言い尽くせていない物足りなさを感じていた。


先日、とあるテレビの音楽特番に
 
三浦大知さんが出演されているのを観ていて
 
一つ、彼の歌唱癖のようなある特徴に気づいた。


それは語尾を必ず大きめにしゃくり上げる
 
という歌唱スタイルなのだけども


本人が意識的にそれをやってるか
 
どうかはさておき、あのしゃくり上げは

【ビートを刻む】という感覚から
 
 
ほぼ無意識に近いレベルでもともと
 
始まっているのではないか?と直感した。


そもそも論として
 
商業音楽における歌唱とは
 
歌以前に娯楽歌のためのものである。


中にはリズムパートを含まない楽曲もあるが
 
それでも根底にはリズムという概念は
 
避けては通れないものであり


これが不十分なシンガーというのは
 
プロの土俵で勝負する権利がない
 
くらいに思っていてもいいくらいだ。


ただし、

 
持って生まれたポテンシャルが
 
それぞれあるのでこれもまた
 
最低ラインの合格点があるならば
 
それ以上はあったに越したことはない

といういつもの話ではある。
 
 
限界を感じている人は合格点あれば
 
それでよしと思っていればいい。


大知くんのパフォーマンスを
 
久々に拝見していた時


【ビート感】というキーワードが
 
私が感じていた表現の不足感を
 
満たすのに今のところ最適だと思った。

 



要するにネット上やCDなどの
 
カラオケ音源を通じて
 
歌メロを歌ってきた経験しかない
 
若い歌唱者の多くには


この【ビート感】という視点が
 
完全に欠落しているケースが散見される。


時々テレビ放映される”歌うま王”系の
 
カラオケ歌自慢合戦のような番組で
 
耳にする歌もこういうのがかなり多い。


みな、表面のメロディーだけを
 
上手になぞるのは得意かもしれないが
 
音楽のベースとなる「リズム」の間にある
 
【ビート感】という意識は大概ない。


結果、リズムも当然甘くなる。

この”刻む”という肌感覚はとても重要で
 
歌にさまざまな角度から動的要素を与える
 
 
それは”止める”技術も含めた安定も包括する。
 

こういう視点がない者の歌は
 
浅く、平たく、メリハリがない。
 

ただメロディーだけを良い発声方法で
 
上手になぞればOKではないのだ。
 

商業歌手として勝負する人たちには
 
譜面上である程度追えるスキルと
 
譜面上では追えない”裏”スキル的なものがある。

 
【ビート感】などはもちろん後者で
 
これがもたらす境界線はかなり大きい。


どうすればこの感覚を腹に落とせるのか?
 

メロディーとせいぜいコード感に
 
神経を配るだけではなく
 
音楽の構成全体をできるだけ把握し
 
体で聴き込む。極論これしかない。


そもそも楽曲がどのような編成で
 
構築されているのか・・・?


20代前半以下のデジタル世代の
 
アマチュアシンガーには
 
それすら考えたことない者も多いだろう。


視点を広げてボーカルパート以外の
 
音楽要素にも神経を配る習慣をつけること。


当然、最初からすぐにできるはずもないし
 
分からなければそうした基礎知識を
 
あらゆるデータで引っ張ってきて学べばよい。


YouTubeで次々に楽曲を辿って聴くのと同じ
 
私があなた方と同じ年の頃だった20年前ならまだしも
 
動画でもテキストでもそういうことを
 
教えてくれている場所は探せばいくらでも
 
今の時代、転がっているだろう。


蛇足だが、歌の次にこの傾向が高いのは
 
ギタリストじゃないかと思っている。

 
リズムを刻むことはなくないが
 
人によってはメロディーを奏でることも多く
 
シンガーと同じ状態に陥りやすいのでは?
 
と個人的に感じている。


ピアノやキーボードなどの鍵盤楽器は
 
案外と左手でベースやリズム要素を押さえるからか
 
ギタリストよりはマシなことが多い。
 
 
懸念するとしたら
 
むしろテンポ感じゃないだろうか。


メロディー楽器と歌は全体的にテンポキープが
 
とても苦手な人が多いように思う。
(⇒同じテンポで演奏を続けられず、どんどん速くなる)

 
「”音楽の細かいことは私はよく分からないんで”
 
とか言いながらほんとけっこう色々と
 
理解ってるもんね、さとみちゃんて。笑」


と、以前に業界の先輩で(恐れながら)友人でもある
 
パーカッショニストの小澤亜子さんから
 
ふとした会話の中で言って頂いたことがあったが


いろんな音楽屋の実態を見聴きしては
 
知らず知らずこういうことを私は長年の間
 
アーカイヴ分析してきたのかもしれない。


ともあれ、商業音楽を歌うなら
 
メロは当然として、ビート感も意識して養うこと。


仮にピアノかギターのみのシンプルな
 
アコースティック編成であったとしても
 
これがないことには始まらないと思う。
 

人気の投稿